旅の行く先
新しいシーズンに新しい板を試してきた。
昔ながらの自分の身の丈より長い板を使ってきたのに、今度の新しい板は
小さく括れも凄い。撓りも良く体重をかけたときのバランスが大丈夫かと思え
るほどだった。
試す前は不安だった。この板は自分を受け入れてくれるのだろうかと?
年末の3日間程をこの板のために時間を割いた。

初めて登る山は高く険しく、スノーシューを履いていても先に進むのが苦しく、
自分の体力の衰えを感じた。実に山に分け入り滑るのは3年ぶりの事だから
当たり前と言えばそうなのだが、自分の体力に自信があったので少なからず
ショックだった。
僕達はリフトで行けるところまで行き、夏季に利用する山小屋で一夜を過ごし、
明日の朝まだ日が昇る前に出かけて山頂を目指す事にした。
誰も滑っていない場所を探すために。
深雪の中を登って行くのは本当に大変で、一生懸命歩いているにもかかわらず
一向に前へ進まない。装備はリュックに食料や寝袋などを積め、スキー板を担い
で登る。もちろんカメラも持参。つくづくカメラマンである事を恨めしく思う。

翌朝未明まだ日が昇る前に僕らは出発した。
月明かりと頭に付けたカンデラだけを頼りに先を急ぐ。
月明かりに照らされる新雪はキラキラと輝き、この碧い時間を更に美しく演出する。
僕はカメラを構えたい衝動を抑えて、皆と行動を共にする事を選んだ。
目的は唯一つ山頂での朝日を拝みながら滑ること。
辺りには雪を掻き分け進む音とハアハアと呼吸音、それに白い息が見えるだけだった。

どれだけ時間がたったのだろうか?
多分出発して2時間くらいは経っていただろう。ようやく山頂が見えてきた。
疲れていたにもかかわらず、皆の進むスピードが上がってきた。
僕もはやる気持ちを抑えられずに、唯唯山頂を目指して歩いた。
「もうすぐ。もうすぐ。」この言葉だけが繰り返し頭の中を駆け巡り、無我夢中だった
ような気がする。
疲れも一気に吹っ飛んでいったようだ。
山頂に着いてすぐにスノーシューから真新しい板えと皆履き替え、まさに今昇ってくる
太陽を待ち構えていた。少し薄曇だったが、どうやら太陽は僕らに微笑む事を選択して
くれたようだ。
山頂で眺める日の出の光景はそれまでの疲れを一気に忘れさせてくれる。
誰かが用意してきたワインを回し始めた。
体温で少し暖かくなってしまったワインが飲んでいるうちにどんどん冷える。
ここは零下20度の世界。

早く滑り出したい衝動をじっと抑え続けていたが、一人が我慢しきれずに動いた。
その描かれだしたシュプールは艶かしく色気を帯びているようにさえ見えた。
僕はそのシュプールに反応している自分自身を感じ、スキーの向きを谷へと向けて
静かに滑り始めた。


僕ではありません。なぜなら・・・
photo by GON
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by illy23 | 2005-01-02 23:46 | スポーツ
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