いつか戻る場所 vol.3
人の記憶って曖昧なものだ。
あれ程楽しかったVancouverの日々。
出会った人達それぞれに思い出がある。
でも、忘れているんです。



名前を・・・

本当に失礼な事だと思っています。
最初のクラスの人で、どーしても思い出せない人がいる。

違いますよ。
忘れていた静岡の女性なら、名前も思い出しました。
「エミ」
沖縄の女の子は、
「サオリ」
イタリアのragazzaは、
「ラファエラ」
岐阜の高校生は、
陸上部が、
「カズヒサ」
帰宅部が、
「トモヒロ」

そうなんです。
もう一人。
東京の男子高校生・・・
ダメです。
どーしても思い出せません。

実は訳があります。
この男の子、最初の1週間でクラスを変更しました。
僕達に馴染めないという事で、親に連絡して個人レッスンへ。
すっごい真面目なんだけど、おっとり君。
彼が個人レッスンへ移った理由。
もしかすると、僕に原因があるかもしれないんです。
いや、間違いなく僕が悪いんだろうな。

僕はそれなりに気を使ったつもりだった。
この3人の高校生を引き連れて、初めての週末の時にWistlerへスノボに出かけ
ました。
もちろん、僕がコテージを借りて3人を招待したんです。

※Whistlerのスキー場は、アメリカ大陸最大規模を誇る。
北米最大のBlackomb(2440m)とWhistler(2182m)の2つの山からなり、
2800haの滑走面積の中に、200以上のコース、3つの氷河を擁する。
2010年にはVancouver五輪のスキー・スノーボード競技が開催される。
また、麓にあるWhistler Villageはレストラン、ホテル、アクティビティなどが集まる
ウィスラーの中心エリアで、3つのエリア(Whistler Village、Upper Village、
Village North)に分かれている。(殆ど都市といった様相)※

僕は当時社会人(休業中)だったし、相手は高校生。
若い子とコミュニケーションはかるには、まずちょっと余裕のあるところを魅せとこうっ
て腹です。(笑)
一泊二日だけだったけど、楽しい週末になる筈でした。
初日は良かったんです。
到着したのが昼だった事もあり、Blackombの下の方で練習がてらチョロチョロと
滑ってその日は終わり、晩飯も大盤振る舞い。
カナダなのに日本食なんか食べちゃいました。

夜も楽しかったよー。
だって、そりゃ経験豊かなお兄様(僕、僕の事ですから・・・笑)と青い高校生とく
りゃあする話は一つ。

「世界情勢における日本の役割と立場」・・・ってなんでやねん!

エロですよ。エロ話。だって男だもん。(開き直り)
「ほんでな、あれがなこうなって、あーなるやん。ほしたら、こうすればええねん」
(何故か謎の関西弁・・・関西の方すみません)
まあ、あれですよ。
有る事、無い事(話半分ですから・・・笑)話していたんですけど、今時の高校生
の方が凄かったりして・・・
結構タジタジでしたけど、顔色は変えないようにどうにか踏ん張っていましたね。

こうして一晩明かして、翌日は朝早くからWistlerの山頂に上がって滑る事に。
Whistler Villageからは、ゴンドラでWhistler山頂に登ることができるのだけど、
これがまた長くて、山頂まで約20分。
Wistlerデカ過ぎです。

山頂に到着すると辺りは大雪が降っていました。
まあ雪だったので、それ程気にする事も無く麓で会おうと言って各自滑り出したん
だけど、この後大変な事に成るとは、この時思いもよらなかった。

下り始めて少しして、雪が霙交じりになってきて、次第に雨の様相を呈してきた。
しばらくはお互い来てるのを確認しあって滑っていたのだけれど、次第にバラバラ
になってしまい、雨も手伝って気持ちが早く降りる方を選んでしまった。
僕は引率している責任もあるから、皆を気遣わなくてはいけない立場だったにも
関わらず、直線だし大丈夫だろうと勝手に決め付けて一気に滑り降りた。
確かに大丈夫だろうという勘は半分当たってた。
トモとカズはずぶ濡れに成りながらも、予定通り滑り降りてきた。
が、東京の彼だけがいつまでたっても降りてこない。
ヤバイと思って直ぐに、スキースクールのレスキューの人に捜索を頼んだ。
(僕も探しに行こうとしたのだが、二重遭難の可能性があるからと止められた。)
1時間以上は待っただろうか、ようやく彼はレスキューのスノーモービルに乗って
降りてきた。
レスキューの人の話を聴くと、雨が酷くなったので、中腹の木陰で彼は立ち竦んで
いたのだという事だった。
無事だった事は正直ホッとしたし、良かった。
だけど、僕が全員の状況を気にしていたら防げた事故だった。

帰りのバスの中、みんな疲れ果てて眠っていたけど、僕は眠る事ができずに悶々
とただするだけ。
今回の事は反省してもし足りない。
もしも大事にいたってたら、彼の親御さんに僕は償う事が出来るのだろう?
きっと何も出来はしない。
本当に無事で良かった。
そう思う以外に、自分の心を寄せる場所など無かった。

翌日、いつものように学校に顔を出すと、ペニーから彼が個人レッスンに移る事に
なって、今日からこのクラスに来ないと言われた。
それ以降、学校で彼の姿を見掛ける事はなくなった。
後味の悪さが僕の胸の中に残った瞬間だった。

僕は彼の名前すら覚えていない。

夕暮れのトラム
photo by GON
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by illy23 | 2005-03-31 08:00 | いつか戻る場所
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